エキスポシティのIMAX

ノーランの新作『ダンケルク』は、全篇の75%にあたる部分をIMAX 2Dカメラで撮影していると知り、できるかぎり想定通りの上映環境でみたいと思い、エキスポシティの109シネマに行ってきた。

ここの次世代IMAXレーザーは、4k投影が可能でスクリーンが日本最大級の18m×26mと、とんでもなくでかい(ビルの6階相当らしい)。この設備のおかげで、1.43:1のアス比の場面も問題なく上映できる。これをみると、通常のIMAXがlieMAX呼ばわりされるのも納得してしまう。

肝心の映像といえば、極端に遠近感がつかみやすい場面とそうでない場面で際立っていた。

前者は、とにかく奥行きの感覚を出すのに優れている。冒頭の市街地のシーンは、街並みが遠近法を強化することもあって奥への抜け感が抜群に出ていた。空に舞うビラも距離感の定位を崩しているのがうまい。後者でいえば、画面いっぱいの空を飛ぶ戦闘機のショットなど相対的に動きを把握できる手がかりが少ないが、それが逆に飛行機の上から海を見下ろすときの実際の感覚に近くリアルに感じてしまう。別にコックピットからの主観ショットというわけでもないのに、なぜか似たような感覚が引き出されるという意味で、フライトシミュレータに近い。

1.43:1の比率は大半のフォーマットに比べて縦に長いので、フレームを色々と利用しやすい印象。とくに海上のシーンは上下左右のフレームに加えて海面の水平線が入るが、さすがのホイテ・ヴァン・ホイテマ、これをうまく利用して傾く船のなかで水平感覚がおかしくなる様子がうまく撮影されていた。ほかにも何気ないような、縦に伸びる構図が決まっている。砂浜を左右に移動するわりと重要なショットがどうもイマイチだったのは、この比率のせいなような気がする。

月並みな感想だが、12chの音響もあいまって、みるというより体感するという方が適切かもしれない。そしてそれが可能だからこそ、ノーランがこのテーマを選んだということなのだろう。それほど名を知られていない俳優を起用し、戦場から脱出しようとするときに起きたいくつかのできごとを、ほとんどセリフもなく淡々と呈示することで、本作が戦争を「フラットに」描くためには、IMAXという上映環境が欠かせない。‘‘the enemy’’と呼ばせることにしても、ラストのショットにしても、IMAX以外でもそのあたりは色々とバランスをとろうとしていた。(とはいえそれがどの程度できているかは別問題。一番進行時間が短いタイムラインで、トム・ハーディが英雄的なパイロットという時点で推して知るべし)

 

それにしても、本作でもこだわっていたように、ノーランは相変わらず時間の人ですね(『ダンケルク』はれっきとしたサスペンス)。

 

上映後なにも映っていないスクリーンを撮影するも、あまりに大きく十分な距離をとれずに苦戦するひとびと。実物のスクリーンを前にすると、写真よりはるかに大きく感じます。

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ちなみに日本最大級のスクリーンは、北九州のスペースワールドにあるらしい(21m×28m)。IMAX上映を細々と続けていたが、悲しいことに年内で閉園…思い出もあるので、それまでに行けたら行っときたいところ。